震災後の公費解体を通して見つめ直した、住まいと暮らし

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住まいを取り巻く環境は様々です。
一戸建て、マンション、2拠点生活も一般的になってきて、選択肢も多くなりました。

そんな中忘れてはいけないのが、災害です。

日本はどこで何が起こっても不思議ではない地震の多い国です。
日々の生活に感謝をしつつ、災害への心構えは忘れずに過ごしていく事が大切です。

はじめに

Copyright:石川県観光連盟

2024年元旦。
能登半島をマグニチュード7.6の地震が襲いました。
つい最近のことのように感じますが、あれから二年が経ちました。

その年と翌年の二年間、偶然にも震災後の公費解体の仕事に、わずかではありますが携わる機会がありました。

当時は目の前の業務に追われ、ゆっくりと言葉にする余裕がありませんでした。しかし、解体に関する業務がひと区切りついた今、あらためてこの経験を振り返ってみたいと思うようになりました。

この文章は、震災後の公費解体を通して、私自身が見つめ直した「住まい」と「暮らし」についての記録です。

震災について

2024年1月1日に発生した能登半島地震による被害状況は、非常に大きなものでした。

地震の規模はマグニチュード7.6。分類としては「大地震」にあたり、最大震度7を観測しました。阪神・淡路大震災がマグニチュード7.3であったことを考えると、その揺れの大きさがいかに甚大であったかが分かります。

また、最大で約4メートルに及ぶ海岸の隆起が確認され、明治以降で最大規模とも言われています。場所によっては海底が露出し、これまで当たり前だった景色が一変しました。

こうした被害の中で、多くの住まいが「住み続けることのできない状態」になりました。全壊・半壊・一部破損を含めると、約13万7千棟もの建物が被害を受けたとされています。

公費解体

震災で被災した建物は、本来であれば「私有財産」のため、処分や解体は所有者が自分の責任のもとで行うものです。

しかし、大地震のように被害が広範囲に及ぶ場合、個人だけで対応することは現実的ではありません。そこで自治体が災害復興の一環として関わり、所有者に代わって建物の解体・撤去を行う仕組みが設けられています。それが「公費解体制度」です。

公費解体は、被災地の安全確保や生活再建を進めるうえで、二次被害の防止やまちの環境を整える役割も担っています。

特定非常災害に認定されるような大きな震災では、この制度が適用されます。被災した建物は自治体による調査を受け、罹災証明書(または被災証明書)が発行されます。その判定の中で、「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」とされた建物が、公費解体の対象となります

私が携わったのは、この公費解体制度の中で行われる、解体に必要な調査図面の作成や公費解体費用の算定といった業務でした。

図面の向こうにある暮らし

私が関わらせていただいたのは、公費解体に必要な調査後の図面の作成や、解体数量の算定といった業務でした。

調査前に被害状況や申請状況などを確認し、調査後の写真や資料、ヒアリング内容、家屋等の下図をもとに解体に必要な情報を図面化、および算定していきます。

被害内容は様々で、瓦屋根が崩れ落ちている家、2階建だったのが平家くらいに潰れてしまった家、湾曲した家、隣の家の倒壊によって被災した家など、同じ地域で揺れが似ていたとしても、どれ一つとして同じ状態の建物はありませんでした。

同年9月に起こった水害はさらなる被害を広げ、地震でなんとか保っていた家屋がここで崩壊してしまう事態も引き起こされてしまいました。

また、道路状況が悪く調査自体が困難な家屋もありました。

こうしたさまざまな事実を見聞きしながら進めていく作業は単純ではありません。被災された方々の暮らしがそれぞれであった分、作図から算定まで、どれ一つ同じにはならないものを探り、かたちにしていくものでした。

図面や数量として整理されていく一棟一棟は、かつての暮らしを支えていた住まいでもありました。

あらためて大切にしたい住まいのあり方

解体に関わる仕事を通して、住まいは「建てる時」だけでなく、「役目を終える時」まで含めて考えるものなのだと、あらためて感じるようになりました。

建物は解体されると、すべて産業廃棄物として処理されます。今回の解体費用とその解体の量を目の当たりにし、作業をすすめる過程の中で、自然素材とそうでない素材とでは、環境に与える影響に大きな違いがあることも実感しました。一つ一つは小さくてもこのようなまとまった量になると大変な量になります。

目に見える「かたち」が失われたあとも、素材は環境の一部として残り続けます。

だからこそ、住まいに使われる素材は、人の暮らしだけでなく、その先の環境にも配慮されたものであってほしいと思います。

自然素材や自然の色が持つやわらかさや循環性は、暮らしを支えるだけでなく、心や環境を静かに整えてくれるものだと感じています。
これからの住まいづくりでは、そうした素材の力を大切にしながら、長く人に寄り添う空間を考えていきたいと改めて思いました。

おわりに

住まいは暮らしの鏡です。

そこに重ねられてきた時間や記憶は、形を失っても人の中に残り続けます。

役目を終えた住まいへの敬意とともに、この地に再び暮らしが芽吹くことを願って。


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