アアルト自邸 ― 暮らしの中にある自然

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photo:ateliercomado

光と素材が呼吸する家:ALVAR AALTO 自邸より

2025年、フィンランドを訪れました。
フィンランドの建築家といえば、アルヴァアアルトと言っても過言ではない建築家です。日本にも多くのファンがおり、私もその一人です。

アルヴァ・アアルト 1898.2.3-1976.5.11

フィンランドで出会ったアアルト建築の一つ目は、「Aalto House/アアルトハウス」です。
1934年(竣工は1936年)ヘルシンキ郊外に土地を購入したアアルトとアイノが建てた自邸で、現在はアアルト財団が保持し一般公開されています。

自然へひらかれた空間構成

場所は、ヘルシンキ郊外。とはいえ、コンパクトな都市なので、都心からはさほど遠くなく行ける便利な場所にあります。私は、自然豊かなヌークシオで宿泊していたのでそちらからバスからトラムに乗り継いで移動をしました。

内観希望をする場合は時間予約を事前にし、ツアーを申し込むとスムーズです。
係の方が解説しながら、割とフリーな感じで内部を見学することができます。

住宅部分、スタジオ部分という内部の機能を繋げた建築ですが、外観からもファサードの素材の使い分けがされていてそれを感じ取ることができます。

photo:ateliercomado

写真は住宅部分の裏庭から撮影した外観ですが、住宅部分の方は落ち着いた色合いに着色した薄い木板が使われています。

photo:ateliercomado

こちらは住宅部から続くスタジオ部分の外壁で、形としては細長く白く塗装したレンガ造になっています。木からレンガへ、素材を変えていますが、同じ白を使って統一感を出した外壁デザインです。サッシ枠はどちらも木であることから、より一体感のあるものになっているように思います。

さらに全ての外壁を彩る緑やツタ類が空間をさらに柔らかくしている事は間違いありません。

光・色・素材がつくるやわらかな空気感

内部空間では、光と自然素材のやわらかな空気感、そしてフィンランド人にはやや小ぶり(?)、日本人にはぴったりなヒューマンスケールを味わうことができます。

photo:ateliercomado

小さな玄関を入ると靴を脱ぎ、まずはアアルトのスタジオに案内されました。
リビングを通過して、スタジオに入るには段があり、そこで事務所と家族の空間との軽い仕切りがされていたのだと思います。
重厚な扉があると光や空気感が遮られてしまいますが、内部でも光をふんだんに取り入れ、一体感をもちつつ、区切りをつけるというサスティナブルな空間の仕分け方です。

スタジオ内からは緑が見え、光が各方面から差し込み、かつ玄関から見ると対角線上の先にあり、リビングの中心からはデスクは見えにくく、裏庭からも見えにくいプライバシーを保てるような作りになっていました。

photo:ateliercomado

スタジオからは、さらにレンガの階段で上がった先の図書ルームのような場所もありました。
アルテックのカーテンで仕切られているので、コンパクトな部屋で一人構想するアアルトを想像するしてしまいますね。

photo:ateliercomado

リビングには、たくさんの光が差し込んでいます。
冬は光が入る時間の制限があるフィンランド。窓を効果的に配置し、低い日光の光をも最大限に取り込む工夫がされています。

内部の素材はレンガや布、繊維マットや木材とそれぞれの部屋毎に素材の違いがみられ、床は木材やリノリウムでの仕上げと各所空間にあわせてセレクトしていました。

木材などの自然素材は経年劣化が魅力にもなります。
管理もきちんとされていることもあり、適度な経年劣化を経て、自然に寄り添う息遣いのある内部になっています。
木製サッシの窓カウンターにたくさん並べられた植物から外部の緑に繋がっていく、まさに自然とつながる構成もまた魅力です。

ダイニングルームの壁面は竹の押縁がアクセントになっている特徴的なデザインです。

建具や手すりなど、ディテールにもこだわった実験住宅のようにも見えますね。

デザインされたキャビネットは、向かいのキッチンから給仕できるような仕組みになっていて動線も考えられたものとなっています。
少しの空間も無駄にせず、圧倒的なデザインと素材感で一つ一つをとっても素晴らしい空間構成だと感じずにはいられません。

インテリアも面白く、各所に自身のデザインされたプロダクトがあるだけでなく、ダイニングには新婚旅行でイタリア旅行から持ち帰った椅子が置かれています。自分たちだけで過ごす大切な場所に思い出の家具がある、という誰もが持ち合わせている感覚が自然に入りこんでいて、ますます魅力を感じずにはいられません。

自然のゆらぎ

photo:ateliercomado

写真は2階から観た裏庭の様子です。緑豊かな地では叶えようとすれば叶う環境かもしれませんが、制限のある範囲がより美しさを作り出すものだとも思っています。

そのバランスがとても心地よく、木質素材やレンガなど天然の素材で構成された建築が、夏の短いフィンランドの自然を受けて、光と色を変えてゆく。まさに自然のゆらぎが感じられる住宅。

その感覚は、草木染めの色のゆらぎにもどこか似ているように思います。

私自身も、光や素材のゆらぎを大切にしながら、暮らしの中に自然の気配を感じられる空間をこれからも考えていきたいと思いました。

参考情報

アアルト自邸へは以下のサイトで事前予約、事前支払いをしてから行きます。

[Aalto House]

■入場料 (2026年)
大人:32ユーロ
学生・高齢者:16ユーロ
18歳未満:無料

■交通
・路面電車4:Laajalahden aukio駅から徒歩5分程度
・バス:数系統があるのでgoogle等で検索すると良いです

photo:ateliercomado 路面電車沿いの雰囲気

■最寄りのレストラン
・Ravintola Lumbini Munkkiniemi
Place:Huopalahdentie 13, 00330 Helsinki, フィンランド
バス移動し、少し早めに着いたのとお米が食べたいな、という気分となり、ここでランチをして行きました。スパイシーで美味しいカレーでした。

・Restaurant Mauritz
Place:Munkkiniemen puistotie 17, 00330 Helsinki, フィンランド
アアルト自邸近くのレストラン、フレンチで評判も良いです。


フィンランドは、国土面積は日本より少し小さいくらいですが人口が1/20程度と日本よりはるかに少ない国。国民全体で工夫して生活を維持しておりデザインからも分かるように無駄のないシンプルなものを好む国民性だと理解できます。

アアルト自身もフィンランドの住宅については、ローコストで良質な生活ができるようにと実験的な試みを多くしていることでも有名で、労働者向けの集合住宅の開発をしようとされていました。

人間らしい住まい、この地で生きていくための豊かな住まいを考えていた結果、様々な試みがあったものだと思います。

この考えを常に持って住まいを考えるということが、現代の私たちにも根本的に大切なことだといつも教えてくれています。

これからも原点に戻るようにアアルト自邸に戻って建築と自然について考察していこうと思います。

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